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非正規雇用の一典型としての外国人労働者における労災・職業病リスクの解明と参加型手法による予防対策の確立(厚生労働科学研究第0401002号)
USE2009(Understanding Small Enterprises 2009:
小規模事業場を理解する国際学会2009)参加報告
報告 国際協力センター 吉川徹
| 1.学会概要 |
| 2009年10月20日から10月23日にかけ、デンマーク王国ヘルシンオア」市のLo-skolen(労働組合学校)でUSE2009(Understanding Small Enterprises 2009:小規模事業場を理解する国際学会2009)が開催されましました。ヘルシンオア市は首都コペンハーゲンから電車で北に一時間程の距離にある港町です。
本会議は中小企業における労働条件とビジネス開発を研究者と実践者とで討議する第1回目の国際会議として企画されましました。大会長はデンマーク国立労働環境研究センターのPeter Hasle氏が努め、北欧諸国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)と欧州(EU)、北米、日本などが企画委員として参加しています。 |
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テーマは「a healthy working life in a healthy business (健康的な企業経営における健康的な労働生活)」で、世界28カ国から約150名が参加しました。参加者の3分の1が地元デンマークからで、スウェーデン/フィンランド/英国/ニュージーランド/日本が各7名、カナダ/韓国が各6名、ドイツ/オランダが各5名、フランス4名、ポーランド/ノルウェーが各3名、ほか2名以下の米国、スペイン、アイルランド、スイス、ポルトガルなどに加え、中進国/開発途上国からはブラジル、アルジェリア、キプロス、チェコ、ケニア、ウガンダ、ネパールなどからの参加がありました。 |
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3日間の会議では7つのキーノート講演(全体会議)、7つのテーマに分かれたワークショップ(3つのセッションの同時進行)という構成でした。ワークショップの一部はさらに3つほどに分かれて討議が行われたセッションもありました。主なキーノート講演は「リスクアセスメントの実施における中小企業の最良支援(Jukkka Takala、欧州安全衛生庁)」「小規模事業場の解決すべきこと-研究と日々の生活のなかで-(Peter Hasle、デンマーク)」「企業倫理と小規模事業場(Laura Spence、英国)」「中小企業とインフォーマル経済における労働産業安全保健を改善する参加型アプローチ(Toru Itani、ILO)」など、小規模事業場が抱える企業経営のあり方と安全保健の視点から、研究者、中小企業コンサルタント、安全衛生担当実務者、労働組合、国際機関や行政担当者などそれぞれの立場から発表が行われました。 |
「企業倫理と小規模事業場(Laura Spence、英国)」
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7つのワークショップのテーマは「企業の社会的責任(CSR)」「実践者の経験」「参加型アプローチによる産業安全保健改善」「産業安全保健マネジメント導入における仲介者(Intermediaries)の役割」「小規模事業場における化学物質曝露の予防と評価」「災害防止と安全プロモーション」「産業保健の法律・規制と介入」「公式・非公式アプローチのバランス」「オーナー経営者と家族的経営、中小企業文化とリーダーシップ」などで、各ワークショップとも十分な討議時間があり、北欧における中小企業文化を中心としました話題に欧州やアジアなどからの報告が重なり豊かな意見交換の場となっていました。
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大会長:デンマーク国立労働環境研究センターのPeter Hasle氏 |
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労働科学研究所の吉川は「参加型アプローチによる産業安全保健改善」のセッションにおいて「Roles of occupational health teams in facilitating participatory risk management in small-scale workplaces」のタイトルで「製本事業場」「歯科診療所」「美容院・理容院」における職場改善における産業保健専門職の役割を報告しました。フロアからは、その職場改善がスタートしましたきっかけは何か、役割担当のなかでのキーパーソンは誰か、という質問があり、欧州においても小規模職場への支援は多チャンネルでキーパーソンを支える仕組みが重要と回答し、欧州研究者らと意見が一致しました。
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写真はコペンハーゲンの有名な「人魚の像」本文とは関係ありません。あまりがっかりはしませんでした) |
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発表のなかで「非正規雇用の一典型としての外国人労働者における労災・職業病リスクの解明と参加型手法による予防対策の確立」のために重要な欧州の報告として、特に印象に残った次の2演題です。 |
「英国NHSのプライマリヘルスケアにおける産業保健サービスの役割(英国)」
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英国のHarling氏(HNS Plus:国立健康サービス機関)は、英国では1948年にスタートしましたNHSのプライマリヘルスケアサービスには産業保健サービスに含まれておらず、2002年に実施した調査で、英国の中小企業でほとんど産業保健サービスを受けていないことが明らかになったことは、驚くに値せず政策による当然の結果だと報告しました。研究では、低収入・単純労働といった労働条件になりやすい中小企業では、労働者の健康格差に重大な影響を及ぼしている。産業保健への介入は個人の健康と社会の双方に利益があることが科学的に証明されており、NHSの保健サービスに基本的な産業保健サービスの普及をより強化する方向で検討していると報告しました。英国は世界で最も死亡災害の率が低い国です。その英国でプライマリヘルスケアサービスにおける産業保健強化の方針が議論されている点は興味深く感じられました。 |
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「小企業に雇用される移民労働者への産業安全保健導入戦略(カナダ)」
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2つ目はカナダのGravel氏(ケベック大学)の「小企業に雇用される移民労働者への産業安全保健導入戦略」の報告でした。Gravel氏はモントリール市で25%以上の移民労働者を雇用している50人以下の規模の20企業と、移民労働者を雇用していない企業10社を比較する質的研究により3つの異なる差異を見出しました。それらは、1)経営者が移民労働者の安全と健康の議論に対する態度の相違、2)労働者と雇用者が利用できる安全保健に関連しました予防技術を持ってるか否か、3)産業安全保健技術の導入における外部専門家・外部実務者の助言を得ていますか否か、です。移民労働者を雇用している企業の一般的傾向は、@災害に対しては非常に誠意をもって対応するが、予防努力は無視しがちである、A安全衛生委員会はほとんどの企業で設置していない、B移民労働者は安全衛生委員会のメンバーに任命されたとしても、労働者と経営者が共に同じテーブルに着くという民主的な話し合いの場に慣れておらず、またそのような場面を避けようとする傾向にある、と指摘しました。日本でも今後移民労働者の増加が予想され、安全保健の課題が今後も注目されると考えられますが、カナダの調査結果は参考になる興味深い結果です。 |
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学会を通じた知見をまとめてみます。今回の会議におけるさまざまな議論を通じ、小規模事業場の健康的な経営と労働者の安全保健支援のために重要と感じたキーワードは以下の6つにまちめられるとの印象でした。 |
「attractive work」
「sector-base approach」
「intermediaries」
「good practice」
「dialogue mechanism」
「multi-channel」 |
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今回の会議で討議された内容から、小規模事業場の発展にあたって重要な点を整理して、以下のようにまとめてみました。 |
「小規模企業はグローバル化のなかで新しい技術や新しい価値の創造と共にこれからも多くが生まれ、また消えてゆくが、小規模だからこそ「attractive work(魅力ある仕事)」を創出することができる。家族的経営、オーナー経営者の理念には仕事や人生を楽しくする大きな魅力があり、それを失わせてはいけない。小企業を支援する際には、その「業界」が重要である。その業界には業界特有の健康障害リスクが存在し、また、業界特有の仕組みと解決方法がある。国の法や規制で一律制御しようとしてもうまく当てはまらないため「sector-base approach(セクター別アプローチ)」をもとに、労働組合、事業場組合、地域保健サービス、行政、コンサルタント等「intermediaries」が、改善のきっかけを与え、方針を示し、現場の改善を効果的に支援することができる。改善のためには「good practice(良好事例)」の活用を「dialogue mechanism(対話の仕組みつくり)」を活用して、「multi-channel(多チャンネル)」で進めることが重要である。」 |
(文責、吉川 徹)
k※ 本報告の目的
本報告の一部は「非正規雇用の一典型としての外国人労働者における労災・職業病リスクの解明と参加型手法による予防対策の確立(厚生労働科学研究第0401002号)として実施されています。
<出張目的よび概要>外国人労働者における労災・職業病リスクの解明にあたって、その基礎的データ収集にあたっての基本情報を国内外から収集し整理する必要がある。また、外国人労働者を含む非正規労働者、パートタイム労働者などの労災・職業病対策に関して海外、とくに欧州における先進事例から国内における良好事例収集の手法を検討することの参考となる。そこで、2009年10月20〜23日にデンマークのヘルシンゲル市(エルシノア市)で開催される国際産業保健学会中小企業における産業保健科学委員会等の主催によるUSE2009に出席し、欧州における小規模事業場等における非正規労働者の安全と健康に関する施策の情報収集を行う。
学会参加予定の研究分担者吉川は国内の小規模事業場における職場改善の事例を報告し、労働の場における外国人労働者や非正規労働者の労災が多発し、職業病リスクが高いとされる小規模事業場における良好事例収集手法に関する知見を欧州の専門家と意見交換を行う。 ? デンマーク滞在中に、欧州の専門家とミーティングを持ち、欧州における労働者の就労疾病と傷害発生の実態とそのメカニズムに関して知見を得る。
文責 吉川徹(国際協力センター)
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